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その人は言った。 この子はどうするんだ、と。 この子は美音のことだ。 母さんは美音のことを、詳しく親戚の誰かに言っていたわけではなかったらしい。 ただ、兄さんの――紫音の子どもだと。 母親がいないのだ、と。 何故かこの2つが親戚たちには伝わっていた。 誰にでもわかる。 親戚たちが言いたいのは、美音をこれからどうするのかということだと。 俺――紫呉は儲かっているとは言えないが収入があるし、ほっとけ。 問題は、まだ中学生のこの子だ。 そう言っているのは筒抜けだった。 小説家という安定しているとは言い難い仕事に就いている俺は、完全に蚊帳の外。
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