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そんな美音のことが見えていないのか、それとも知っているのに知らないふりをしているのか。 親戚たちは誰が美音を引き取るのだと、大きな声ではないが言い争っている。 あぁ。 今すぐにでも、美音の耳を塞いでしまいたい。 こんな話、聞かせたくない。 怒りやらもどかしさやらが、俺の中に積み重なっていく。 こいつらはわからないんだろうか。 美音にだって意志が、感情が、考えがあるのだということが。 まだ子どもだからと侮っているのだろうか。 子どもにだって、ちゃんと考えはあるというのに! ダァン、と。 気付けば俺は、近場にあった座卓を、拳で力一杯叩いていた。
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