-5-

9/12
前へ
/602ページ
次へ
美音は眼球が震えるほどに目を見開き、俺を見ていた。 美音の肩に手を置き、さっきまでと違う、なるべく優しい声で美音に話を振った。 「美音、お前には選択の権利がある」 「っ」 美音が息を飲んだのが、よくわかった。 「ここにいる親戚の家に引き取られれば、精神的にはどうかわからないけど、お金はある。だからちゃんと養ってもらえる」 「……」 美音は小さく頷いた。 その様子を見て、俺は話を続ける。 「俺のところにくれば、今までと同じような環境になる。でも、お金がない。お前のこと、大学まで行かせたやりたいと思うけど、できないかもしれない。贅沢も、させてやれない」 自分で言っておいて悲しいが、事実だ。 美音は再び頷いた。
/602ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加