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「いいか、お前には選ぶ権利がある。親戚のところにいくか、俺のところにくるか。他のことは気にせず、自分の思うように決めていいんだ」 俺が言い終わるのと同時に、美音の黒目がちな瞳から1粒涙が零れた。 涙はどんどん溢れて、美音の真っ白な頬を濡らしていく。 「……が、いい」 「え?」 泣き始めた所為か、美音の声が震える。 でも美音は、はっきりと言い切った。 「呉さんが、いい」 静まり返った空間に、ポツリと落とされた、それ。 不覚にも、俺の口元は喜びに歪んだ。 「美音」 「は、い」 俺は震える美音の手を取り、強気に笑って言ってやった。 「俺んところに、来い」
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