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「まぁまぁ、そんなこといいじゃないか、紫呉」
「な…」
まだ反論し足りない俺を、「しっ」と口の前に人差し指を立てて諌める兄さん。
よく見れば、美音がやっと寝たらしかった。
「今のところ言えるのは、美音の母親はちゃんといるよってことだけ。どこの誰かっていうのは言えないけど…」
「……そ」
兄さんは本気でそれ以外話す気はないらしいので、仕方なく俺も観念することにした。
「いいじゃない、紫呉。こうなったら紫音(シオン)、徹底的に話さないから」
「母さん…」
紫音というのは兄さんのことだ。
そして俺は紫呉。
母さんはその腕に美音を抱いて、俺の横に腰を下ろした。
「母さん、いいかな」
「いいも何も……」
兄さんの言葉に、母さんがため息交じりの声で笑う。
それに反応したのか、ピク、と美音の手が動く。
「母親がいないんだったら…うちで面倒見るしかないでしょうよ」
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