-1-

5/11
前へ
/602ページ
次へ
「まだコーヒー入れ終わってないの。だから早く起きて?」 そう言いながら呉さんの上から降りる。 「コーヒー入れるんなら、もう行っていいよ」 上半身だけ起こして、呉さんは視線だけこちらに向ける。 「そういうこと言って私を追っ払って、また寝る気でしょ?だから、呉さんがちゃんとベッドから出て階段を降りるまで、見てるからね」 「……」 ベッドの上に座る呉さんを見下ろして、強気にそう告げると、呉さんは小さく舌打ちをして「はいはい」と適当な返事を寄越した。 呉さんは大きな欠伸をしながら、怠そうに掛け布団を軽く4つ折りに畳む。 これ見よがしにゆっくりと立ち上がり、今度は呉さんが私を見下ろした。 「これでいーんでしょ」 不機嫌そうにブスッとした顔でいる呉さんに、私はこれ以上ないってくらいの笑顔を向けた。 「よろしい」
/602ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加