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……お祖母ちゃんが死んでしまった後、既に父親がいない私は親戚の家に引き取られそうになった。 母親の知れない私を快く思っている親戚はおらず、誰もが私を押し付け合っていた。 そんな親戚に引き取られるのは嫌だけど、仕方がない。 これが私の、運命なんだ。 何の力もない中学生の私に、拒否権なんてなかった。 ただ自分の運命を恨み、心臓に突き刺さるような言葉の1つ1つを聞き流す努力をするしかない。 息をするのも苦しい部屋の片隅で自分の殻に閉じこもろうとする私を救い出してくれたのは、呉さんだった。 “……あんたら、こいつにも……美音にも意志があるってわかんねーのかよ!” あの時の呉さんの言葉を思い出すと、今でも喉の奥から込み上げて来るものがある。 あの言葉がなかったら……今頃私は、どうなっていたんだろう。
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