-1-

10/11
前へ
/602ページ
次へ
呉さんは私の叔父さんで、命の恩人で。 そして、私の……。 と、階段を降り切った呉さんが私を振り返る。 「美音、今日は大学、何コマからなの?」 「あ……、大学?」 呉さんに続いて私も階段を降り切り、私より頭1.5個分くらい大きい呉さんを見上げた。 私を見下ろす黒く澄んだ瞳に、彼に対して抱いてはならない感情が私の心臓を握りつぶす。 「んー、3コマ。午後からだよ」 その感情を抑えつけようと、意識的に、不自然にならない程度に呉さんから視線を外す。 「ん。そっか」 そう言いながら呉さんは右腕を伸ばし、私の左耳を引っ掻くようにくすぐる。
/602ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加