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「……ちょっと、目ぇ逸らさないでくれる?傷付くから」
「だって……」
気弱なことを言いながら、からかうような声音で笑って見せる呉さん。
上目遣いの、緩くカーブする前髪から覗く漆黒の瞳。
左の口角だけを上げて、頬杖をつく。
眼鏡越しの視線とシニカルな笑みは、どことなく異性を感じさせて、あぁ、心臓に悪い。
この目を見てると、おかしくなりそうだ。
台所に行くのを装って、呉さんに背を向ける。
「……コーヒーばっかり飲んでると、胃に悪いよ」
別にコーヒーを入れるのは面倒なことじゃないけど、なんか意味もなく抵抗してみたくなって。
背中越しに、小さな抵抗。
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