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「ふーん、そういう事言うんだ」
面白くなさそうな、不機嫌そうな。
そんな声が背後から聞こえてきて、やらかしたかと内心後悔する。
「冗談だよ、入れて来るよ」
彼を怒らせてしまったかという後ろめたさと、彼の態度の急変に妙に焦る自分が恥ずかしいというプライドから、呉さんの顔が見れない。
顔を伏せ、髪の毛で自分の顔を隠しながら呉さんのマグカップに手を伸ばした、その瞬間だった。
「じゃー、もう、いいや」
呉さんが諦めたようにそう言うのと同時に、私の腕が引っ張られた。
「え、ちょっと!?」
不意の出来事にバランス感覚が失われ、崩れた体勢を元に戻せない。
そのまま着地したのは、呉さんの膝の上。
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