義理の父と兄

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走りながら美緒は止まっているタクシーを見つけ乗り込むと浜崎法律事務所に向かった。 ー浜崎法律事務所ー 光博は1人で相談に来たお客を相手していた。 『あの…先生?…』 『あ!はい…何でしょうか…』 『話し聞いてますか』 『もちろん聞いてますよ、浮気をする夫と離婚したいんですよね…』 資料を見ながら光博はなかなか来ない美緒の事を考えていた。 『今、先生は心配事がありまして、すみませんが今日のところは』 静華が現れ客に頭を下げた。 『そうですね、また明日来ます』 女性客は席を立ち頭を下げると法律事務所を出ていった。 『何しに来たんだ』 光博は資料を持って席を立つと机の椅子に座った、静華は机の前に立ち『もう一度、ここで働かせてもらえないかな』と光博に言った。 『俺たちは別れたんだ、それにお前の顔は見たくない、出ていけ忙しいんだ』 光博は資料を見ながら静華に言った。 『謝って許してもらえるとは思ってない…別れたくない…光博…』 静華は涙を流しながら言った。 その時、ドアが開き『遅れてごめん』と言って美緒が入ってきた、静華と光博は同時に美緒に目を向けた。 『話してたんだよね、俺、帰るわ』 『何で帰るんだ、手伝うと言ったろ…静華、今度ゆっくり話そう』 『わかった』 静華は悲しそうな顔で美緒の側を通り法律事務所を出ていった。 美緒は光博の側に近づき『悲しい顔をしてた、もしかして別れ話をしてたのか』と言った。 『当たり前だ、静華のせいでお前は静華が連れてきた男に乱暴された、俺を裏切るようなことをするとは思わなかったよ』 光博は仕事をしながら言った。 『ちょっと出掛けてくる』 美緒は法律事務所を出て静華を追いかけていった。 美緒はまわりを見渡しながら静華の姿を探し見つけると『静華さん!』と叫んだ、静華は立ち止まり振り返ると駆け寄ってくる美緒に驚いた。 『どうしたんですか?』 『父さんのことで話があります』 美緒と静華は近くの喫茶店に入り珈琲とジュースを注文すると向き合って椅子に座った。 『父さんと別れるんですか?』 『仕方ないよ、俺のせいで…遊が君に乱暴した、悲しい思いをさせてごめんね』 静華は美緒に頭を下げた。 『俺はあなたを恨んでません』 『……』 静華は顔を上げ美緒に目を向けた。
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