義理の父と兄

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『はい、すみませんでした』 『もういいから』 落ち込む美緒に静華は微笑んだ。 そこへ社長室から光博が出てきた。 『静華、宮崎さんの個人情報の資料を応接室に持ってきてくれないか』 『わかりました』 静華が返事をすると光博は応接室に行き中に入るとドアを閉めた。 ソファーに座っていた女性は立ち上がり光博に挨拶をした。 『お待たせしました』 光博と女性は同時に向かい合ってソファーに座った。 夫の暴力に悩んで離婚の相談にやって来た女性は泣きながら話した。 そこへ資料を持って静華が入ってきた、そして静華は光博に近づき資料を渡すと応接室を出て行った。 光博は資料を見ながら女性の話を聞いた。 『夫の暴力にもうたえられません…限界です…先生…助けてください』 涙を流し続ける女性に光博が口を開いた。 『宮崎さん、離婚の手続きをしましょう、明日、旦那さんを連れて来てください』 『わかりました、お願いします』 ソファーから立ち上がった女性は光博に頭を下げ応接室を出て、静華と美緒にも頭を下げ法律事務所を出て行った。 応接室から出てきた光博は個人情報の資料を持ったまま『静華、ちょっと来てくれ』と言って社長室に入っていった。 『お客さんが来たら教えてください』 美緒に言うと静華は社長室に入っていった。 美緒は受付場所の椅子に座り机に携帯を置くとその携帯を開き写メールを送り始めた。 その頃、校長室の太一は美緒から送られたメールを見ていた。 『頑張ってやってるみたいだな』 太一は笑顔で写っている美緒の画像を微笑みながら見つめた。 それからしばらくして社長室から光博と静華が出てきた。 『美緒、お腹すいたろ静華も食事をして来たらどうだ』 『お父さんは食事しないの?』 『弁当を買ってきてくれ』 『わかりました、美緒さん行きましょ』 『はい』 美緒は携帯を机の上に置いたまま椅子から立ち上がり事務所を出ていく静華を追いかけていった。 それからしばらくして美緒の携帯が鳴り始めた。 『美緒のやつ携帯を置いていったのか』 光博は鳴り続ける美緒の携帯をじっと見つめた。 『……』 光博は鳴り続ける携帯を掴み開いたその時、音が止んだ。
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