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足がもつれる。平衡感覚が狂う。嫌だ。厭だ。否だ。イヤだ。いやだ。
「どうして、そんな事を言うの? ここには、宮下さんはいないのよ。須永さんの本当の気持ち、言ってくれて構わないのよ?」
直美の口角が釣り上がる。笑っている。伝わっていない。こちらの言葉は、何一つ。本能的な拒絶と嫌悪と恐怖。それらの重苦しいプレッシャーに耐え切れずに、須永は直美に背を向けて走り出した。背筋を伝う悪寒は、須永の心臓にまで達していた。一秒たりとも一緒にいたくない。同じ空気を吸う事さえ、須永には耐え難い事だった。
嫌だ。厭だ。否だ。イヤだ。いやだ──。
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