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少年がこの本に魅せられた最大の理由はその髪型だ。
おじさんと少年はこの写真の男たちと同じ髪型だった。
少年の髪は伸びるとおじさんが鋏で切ってくれる。おじさんの髪は少年が鋏を使って切る。自分がいつからおじさんの髪を切っているのか少年は覚えていない。思い出せないぐらい前から、おじさんの髪の毛をずっと切り続けている。
ひとりで外に出る時は絶対にフードを外すなとおじさんに言われ続けている。フードを被っていると臆病者のように見えることを少年は気にしていた。
もしかすると、おじさんはこの写真の男たちのことも知っているのだろうか。
学校の中には気になる場所がもう一箇所あった。
楽器のある部屋だ。
別の鍵のかかった部屋で、地下の楽器庫にあるのと同じような楽器を見つけていた。
初めて図書館を訪れた日に目にした楽器たち。それから何度も図書館を訪れる際に必ず目にするあの楽器たち。そのどれかにいつか触れてみたいと思いながらも、目もくれないおじさんと一緒だと、どうしても言い出せなかった。宮殿の図書館ではおじさんと離れてあの楽器について書かれた本を探し続けていた。けれど、広大な図書館のどこにそんな本があるのか。闇雲に探すには広過ぎる。図書館に行くたびに膨大な本に打ちのめされそうになる少年にとって、探したい本を見つけるのは至難の業だった。途方もなく高い本棚も少年を悩ませた。おじさんは図書館に行くと少年のことなどかまわず本を探しに行ってしまう。届かない高さの本棚からどうやって本を取り出すのか、そのやり方はまだ教えてもらっていない。
本当のところ、少年は、楽器庫を通過する時に間違えたふりをして、そのひとつに触れてみたことがある。艶のある大きな黒い背の高い三本足の、テーブルとしては高過ぎる楽器。黒い表面にただ触るだけでは何も起こらなかった。何もできなかったことに失望はしなかった。むしろ、楽器というものの正体を知る日への期待はますます高まっていった。
学校で見つけた楽器は楽器庫の棚に置いてある楽器と似ている。少年がなんとか抱えられるほどの大きさで、光沢のある赤い表面が金属で縁取りされている。片方には白と黒の細長い四角が、反対側には丸いボタンが整然と並んでいた。
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