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楽器からは音が出てくる、おじさんからそれだけは聞いている。
居住区の中では大きな音を出すことは禁物だ、おじさんはそうも言っていた。
どうして居住区では音が、音楽が禁じられているのか、その理由は聞いていない。
少年は何度かその楽器の白い四角やボタンを押してみた。音は出ない。これが本当に楽器なのか、少年には確信は無かった。けれど、楽器庫にはこれとほとんど同じものが置いてある。多分、楽器だ。
いつか、音を出してみたい。
でも、今日は無理だ。もう配給所に行かないと。
少年は長居をしてしまったことを後悔していた。
本を閉じ、棚に戻す。
また、来よう。
少年は鞄をつかみ、部屋を出た。
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