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鍵のある場所も知っていた。
鍵のかかった部屋ではまるで作業途中で放置されたかのような状態の様々な道具を見つけた。どれも見ただけで使い道が分かる。触ると、長く使い込み手に馴染んでいるかのようだ。集めた道具を使って望遠鏡を作る。全てが予め定められていたことのように日々の暮らしに組み込まれていく。
それから鍵を使って地下に降りた。
騒音が障壁として設けられていること。超えるためにはマントを使うこと。ひとつひとつを、知っていることを、確認しながら進んでいく。
どうして自分は何もかも知っているのか。
思い出すのではない。ただ、知っているのだ。
失われたはずの記憶を少しずつ発見しながら、さらに長い年月を過ごした。
変化の兆しを感じていた。
窓の外、遥か彼方に山羊女の宮殿が聳えている。尖塔の半ばに灯る火は夜の色、白い色に変わっている。丸天井は鈍く光を吸い込み、世界を灰色で覆う。
背後で少年が深く長く息を吐く。
朝はまだ来ない。
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