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少年は椅子から立ち上がった。そろそろおじさんの背丈に追いつきそうだ。キッチンに向かい、床に放り出された空のカバンをつかむ。
「行ってくる」
「気をつけていけ」
「分かってるよ」
階段を一気に駆け下り、建物の外に出た。
おじさんは相変わらず、気をつけろ、と言う。けれど、少年はもう居住区の男たちを恐れてはいなかった。ただし、最近、配給所でよく見かけるガキどもは別だ。若さと強さがガキどもの誇りだ。誰彼かまわずケンカを吹っかけて騒動を起こす。巻き込まれたくはなかった。
いざとなったら、鍵のかかった部屋に逃げ込んでしまえばいい。
少年は内ポケットの鍵を服の外から確かめた。
図書館に行くようになってからすぐに、おじさんから鍵束の鍵をひとつもらった。ほとんどの部屋の扉を開けられる鍵だ。大事に持ち歩け、失くすな、と、おじさんに言われた。
配給所までは下り坂だ。
少年は軽快な足取りで通りを走り抜けた。遥か彼方の宮殿に向かって飛び出しそうな勢いで。
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