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「全く…
相手がそんなに有名な
資産家じゃないからまだしも…
そうそう、諒(リョウ)は
何でお見合いが嫌なんだ?」
諒、というのは四十を過ぎた男、
秀樹(ヒデキ)の息子の名前だ。
秀樹はため息をついて、
そして息子の方を見る。
すると、おちゃらけた諒は
傘を軽く上下に振りながら答えた。
「なんつーか…
相手に嫌われないように、とかで
本性を隠されるのが嫌、だ…ん?」
傘を上下に振るのをやめ、
足を止めて前を見ていた。
「…どうした?
…あぁ…雨宿りか?」
少し先にあるのは公園などに
設置されている屋根のある休憩所。
そこに、一人の女性がいた。
「…たぶん、ね」
「どうするんだ?
人助けで俺達から
話かけるのか?」
「いや…
彼氏待ってる、とかだったら
俺達が恥かくからね。
やめておこう」
「おおっと。
彼女の体よく見ると
震えてるなぁ」
「………」
嫌な物でも見るように
諒は睨み付けた。
「はぁ…
仕方ない。
これから世界に出るからな、
優しい心も必要なんだよ。」
「なんかいい風に
繋げたな…」
諒は震えている女性の
元に駆けた。
「Excuseme♪
May I help you?」
「え、えと…」
何故か英語の諒に、
困る様子を見せる女性。
オドオドとした表情は、
まだ幼さを感じた。
「今のを日本語に訳すと
すいません、どうかなさいました?
っていう意味になるよ。
覚えておいてね。」
「え?
あ、はい…」
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