偽屋

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雨も上がり店に来ていた客も再び走り出したのを見送る。 「この父型は全部なければ意味がありませんからねぇ。」 とアルファベットのoだけ足りない箱を戸棚へしまう。 「これは彼女が来た時だけにしましょうか」 細い目を更に細め呟いた。そして唇を抑えふうっと1つ息を吐く。すると煙に巻かれ異邦でいた頃の姿を表した。 「昔のことなど、そんなに面白かったんでしょうか」 時々聞かれる異邦の話。話さない訳ではないが、自分が思っている以上に他人は目を輝かせて聞く。同じように今日の多々良にも自分が今までに見てきたものを語る、それは常に日常であった事で。 そして人間の。人間の真似事をし、知りえた事をまだ真似をする。そんな世界。 「俺っちは今の方が断然面白いと思うんですがねぇ」 再び息を吐くと煙に巻かれモブ夫としての姿を表した。 「ただいま帰りました!!途中で雨に降られてもう大変でしたよ!!」 丁度、お使いに出していた翠華が帰ってきて店の戸を閉めた。 「おかえりなさい。ありがとうございます。」 先ほどまでの事などなかったようにまた目を細めて笑うのだった。 「モブ夫さん!!そこの甘露屋で今度は甘納豆もらったよ!!」 「そうですか、それではお茶にしましょう」 ******* 多々良ちゃんの続き的な!! あの父型は取り置きしておきますね!!
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