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カラリと引き戸を開け、足を踏み入れる。
そこは木目の美しい床。金の背景に木々と共に鳥や蝶の舞う絵の書かれた壁。
天井は細部まで書き込まれた天の絵。
それが延々と続いている。
奥は見えない、長い廊下だった。
「おやまぁ。」
「これは一体…??」
屋敷の外観からは思いもよらない大きさの空間に息を呑む。
振り返った途端入口はぐにゃりと歪み、壁と同化し消えた。
「えっ…!?ちょっと!!」
鈴李が入口のあった所に駆け寄り壁に手を添えた。途端近くに描いてあった蝶がパッと壁の中舞う。
「動いた!!!??」
驚いてトンと尻餅をつく。
「さてこれは…少々困りましたねぇ」
鈴李の手を取り立たせるとモブ夫も入口のあった所に手を添えた。ひんやりとした感覚が手を伝うとともに、そこは入口などではなく、既にかべであることに変わりないことを悟る。壁の鳥は空へ飛んだ。
「完全に閉じ込められてしまいましたねぇ。」
淡々と鈴李の方を見ながら言う。
鈴李はというと、この状況を平然と口にする男に呆気に取られながら
「どうしましょう…」
と呟いた。
しばらく無言のまま、思慮を巡らす二人だったが特に何も変わることない。
壁の絵はチラチラ舞い時間の経過を指すようだった。
「まぁ、こんな所にいても仕方ありませんし。進みますか。」
と勝手に決断し、モブ夫は奥に向かって歩みを進めだす。
「えっ…!?ちょっと!?」
それに置いていかれまいと後ろから追う鈴李であった。
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