偽屋

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「やぁ、どうだい、調子は」 「あ、紅艶さんじゃないですかぁ、今日は何をお探しで??」 この村の長である鬼神。紅艶。その紅く長い髪、出で立ちは鬼神と言うだけあってやはり格の違いを感じるが、その内面はというと、とても陽気で、それが他の物を寄せ付けるのだろう。今日も普通に店に来ては品物を物色している。 「いや、ふらっと寄っただけだがな、何か面白いものはないか??例えば…旨い酒とか。」 「うちは酒屋じゃないんですけどねぇ」 苦笑しながら、そう言えばと奥の棚へ目を向ける。 「そこまで珍しいわけじゃないんですが、人間の方では今の時期、昨年の新米から出来た酒が出来上がるんですよ。それをこの前いくらか分けてもらったんですよねぇ。」 「ほう。」 棚から一升瓶を一本出す。 「今の時期、今年の分は今しか出回らない一品なんでね。今回はこれでどうでしょう。」 「なかなかに面白い、しかし大事なのは味であろう??」 「俺っちは酒の味はあまり分かりはしませんのですが、荒削りな、しかし清く華やかな香りだと聞いております。そう例えれば…」 わっと外で風が吹き、桃色の花びらがひとひら舞う。 「春の訪れとも言いましょうか。」 「上手い喩えで誤魔化すな。」 「味は人それぞれですからぁ」 窓からひとひらの花びらが瓶の隣に落ちた。 「もう春もそこまで来てるんですねぇ」 「そうだな」 暖かい陽の光が店を照らした。 ******** 紅艶さんお借りしました!! いきなり春やってきましたすみませんwww 既になんでも屋化してます、すみませんwww雑貨でもなんでもねぇよ…!! ちなみにこのお酒【しぼりたて】というやつです。
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