偽屋

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「今日もいい天気ですねぇ」 日差しは柔らかく、空には雲ひとつない快晴。三寒四温。先日まではかなり寒かったのに、今日はとても暖かい。もうすぐ桜でも咲きそうな勢いである。空を見上げ目を細める。いい天気だ。 「モブ夫さーん!!!」店の前を掃除していると、遠くの、それも上の方で自分を呼ぶ声が聞こえる。不思議に思って上を見上げると、一瞬日を遮るように暗くなる。そして自分の背後からその日を遮った張本人が声をかけてきた。 「お文ですっ!!」 無駄に決め顔である。手には文が一つ握られていた。 「あぁ、いつもありがとうございます。」 多々良から手紙を受け取るとその場で破って中を確認する。 「ふむ。これは……急ぎの物ができましたんでちょっと待っててもらえますか??」 筆を取り文字を書く。 「なら近場回ってきて大丈夫か??」 「えぇ、お昼頃には文をお渡しできるようにしておきますので。」 それを聞くと再び走り出す彼女の背を見送った。
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