偽屋

9/12

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「やぁ、先生、今日は何をお探しで??」 『雑貨屋 にせや』この店には妖怪だけではなく物入りの人間も時にはやってくる。その為人間が日常的に使っているもの以外。そう、妖怪が作った品なども取り揃えている。つまりそれは今でいう一種の“いわく付き”の代物である。 「えぇ、今日は筆がいたみましてね、新調しようと。」 「筆ですかぁ、そうですねぇ」 棚の奥の方の箱を探す。 「どのようなものがお好みで??」 「というと。」 「ここは“にせや”ですよ。古今東西、人間から妖怪までありとあらゆるものを取り揃えておりますからねぇ」 「自分の店ながらよく言うものだ」 そう笑うと 「まぁ、多少の言葉遊びぐらいは許してくださいな」 と返す。そして一つの品物に目が止まった。 「先生はこういうのはお好きですかねぇ」 筆を取り出すと蛹闇の前に差し出した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加