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「す、好きです! スプーンさん、俺と付き合ってください!」
白いテーブルクロスの上で、ナイフが緊張した面持ちでスプーンに告白した。
「え? あの、でも僕……君のことよく知らないんだけど」
ナイフの迫力に押されたのか、スプーンがやや引きぎみに答える。
「あ、そうでした。自己紹介もまだでしたね、俺はナイフと言います。使われる機会があまりないので、引き出しの中にいることが多いんですよ」
「そうなんですね……僕はしょっちゅう使われているので、引き出しの外にいる時間の方が多いかな」
「羨ましいです。でもスプーンさんはとても魅力的だから仕方がないですよ」
スプーンの丸い顔を、ナイフが鋭い目を細めて見つめた。
「それで、あの……俺と付き合って……」
「おおい、スプーン!」
「あ! フォーク」
フォークがやって来た。途端、スプーンがとても嬉しそうな顔を見せる。
「どうしたんだ? そろそろ昼食の時間だろ。今日はスープパスタだから行かないと」
「――えっ、今日……スープパスタなの?」
「そうだけど、何で?」
「ううん、何でもない」
昼のメニューがスープパスタだと聞いたスプーンが、顔を赤らめて俯いた。
(どうしよう……スープパスタだったら、僕の上でフォークがパスタを絡めるんだよね)
スープを満たしたスプーンの上でフォークがパスタを絡め取る場面を想像したスプーンの顔がますます赤くなる。
「さ、スプーン。行こう?」
「――うん」
フォークがスプーンの手を引いた。
「おい、ちょっと待てよ」
スプーンと一緒にその場を離れようとするフォークの肩をナイフが掴んだ。
「――何……あれ? 誰かと思ったらナイフじゃないか。今日は珍しく外に出ていたんだな」
「今朝はパンケーキだっただろう、お前もいたじゃないか。それよりフォーク、その手を離せよ」
ナイフがフォークの手を強引にスプーンから引き離した。
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