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「おい、いきなり何だよ!」
「ナイフ?」
「俺はスプーンさんと話をしているんだ。お前こそ強引にスプーンさんを連れて行くなよ」
ナイフの言葉にフォークが怪訝な顔をした。
「こいつと何の話があるのか知らないけど、こいつは俺のだから」
そう言って、フォークがスプーンのことを抱き寄せた。
「――えっ!? フォーク?」
フォークの腕の中でスプーンが驚いたように顔をあげた。
「スプーン……ちゃんと言ってなかったけど、俺……お前が好きだ」
「フォーク……嬉しい……」
フォークからの告白にスプーンがうっとりとした様子で身を寄せた。フォークの先端のカーブとスプーンの丸い膨らみがぴったりと重なり合う。
「う、嘘だ! そんな……スプーンさんとフォークが……」
「ナイフ、悪いけどこういうことだから。スプーンのことは俺が幸せにする」
「――ナイフ ……ごめんなさい」
「何で、何でだよ! スプーンさん、フォークなんかのどこがいいんだよ、俺の方がずっとスプーンさんのことを幸せにできるのに!」
諦めきれないのか、さらにナイフが言い募る。
「ナイフ、いい加減諦めろ。スプーンはお前とは合わない」
「――なっ」
「考えてみろ、ナイフとスプーンがセットで使われることってあるか?」
「…………」
「お前と一緒にいてもスプーンに寂しい思いをさせるだけだ。そんなのお前も望んでいないだろう?」
「フォーク」
ナイフは心配そうに事のなりゆきを見守るスプーンの方を見た。
「…………わかったよ。好きなヤツを悲しませるなんて、俺も望んじゃいない――スプーンさん」
「はい」
「フォークと……幸せに……」
「…………はい」
これでいいのだと頭ではわかっていても、寄り添うフォークとスプーンの姿を見続けるのは辛い。
ナイフは寄り添う二本にくるりと背を向けると、黙って引き出しの中へと帰って行った。
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