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息を荒げながら、暗い階段を駆け上がっていた。
連続する蝋燭くらいしか明かりがない状況の中、夏の暑さが身体を蝕んでいく。カレンダー通りなら、夏は終わりなのに。
上を見上げる。
終わりが見えない上り坂がまだあることしか語ってくれない。
「……ったく」
悪態をつき、移動を再開するとしばらく上がった踊り場に人影が2つ立っていた。
「ぼさっとしてる時間はないんじゃなかったのか」
「見りゃわかるでしょ。行き止まり」
人影のうちの一人が告げる。
確かに、天井いっぱいに積み上げられた机やらロッカーやらが俺達の進路をふさいでいる。
そんなにリフォームの成果を見せびらかせたいのか。
お断りしたいとこだけど、そうも行かないということをこの山が示している。
「……ったく、ちょいと休憩。作戦建て直しだ」
持っていた装備を投げ出して、階段に座り込んだ。
「早すぎ!!」という声を無視して、ここまでを振り返ってみる。
何がどうしてどういうめぐり合わせでこういうことになったのか。
少なくとも、この夏休みがいろいろと普通じゃなかったってのは確か。
それは俺こと高中 翔(たかなか しょう)が経験した経験したくもない現実。
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