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〈 誰なの、この人? 〉
私が走りながら振り返ったその先には、夜の暗がりの中で、目出し帽を被った巨漢がいた。
夏の夜に目出し帽を被っているその男は、明らかに変質者だと、私は思った。
〈 逃げなくちゃ、
全力で、逃げなくちゃ……。
あの男は普通じゃないわ 〉
私の心臓は急に狂ったように、早鐘を打ち始めた。
早く逃げなさいと、私の第六感が、私に激しく訴えている。
私が全力で走り出すと、巨体の男も、私を追って、全力で走り出した。
間違いない、この変質者のターゲットは、この私だ。
私はそう思うと、生きた心地もしないで走っていた。
この暗がりには、私を助けてくれる人など、誰もいないと思いながら……。
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