第1章 シンデレラ

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「おい、さっきのお客様、忘れ物だ。 追いかけて渡してこい。 今日は勉強会ないから、そのまま帰っていいぞ?」 そう言われて渡された手帳。 そう言えば座った時に持っていた。 だけど開くことなく鏡を睨んで。 客は明美だけで片づけも殆ど終わってたし、ずっと早く帰れてなかったから気遣いをしてくれたんだと思った。 お送りしたとき歩いていった方に走って、駅に着く間際に追いついた。 ベージュのスーツを探して追いかけて。 「お忘れ物です!」 髪の毛を気にしながら歩いていたからすぐにわかった。 背中から声を掛けたら驚いた顔で振り返った顔が、泣いてた…… 髪の毛を気にしていたと思ったのは、 涙を隠そうと前髪をいじってたんだと、解って。 「あ、すみません。 うっかりしちゃって……」 差し出した手帳を受け取ってバッグにしまうと、 頭を下げた。 いえ…… それ以上、声を掛けられなくて、 何も気の利いたことが言えなかった。 2,3歩歩いて、振り返った彼女が、 「少し付き合っていただけません?」
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