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「失礼致しました。笹島様」
「気にする事はない。さあ、続きを楽しもうぞ辰巳屋よ」
「はっ、恐れ入ります。ところで笹島様、実は今日どうしても会わせたい女がおりまして」
「会わせたい女?」
「はい。何でも旦那の仕事の関係で江戸に赴いていたところ大火にあい、身よりを失って自らも旦那の後を追おうとしていたところを私が助け家に置いていたのですが、聞けばその女は松前の出だと言うとこでして」
「ほう」
「それが拾った時は見窄らしい身なりだったのですが、磨けば何ともいい女だったもので・・・」
「そうか。苦しゅうない、その者を直ぐに此処へ連れて参れ」
「はっ、ありがとうございます」
又五郎が部屋の障子戸を静かに開けると、そこには長い黒髪の女が一人座りながら手を突き深々と頭を垂れながら待っていた。辰巳屋が女の名前を笹島に告げる。
「シヅノと申します」
「シヅノか。苦しゅうない、部屋に入られよ」
「さあシヅノ、こちらへ来て笹島様にご挨拶をしなさい」
「はい」
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