第五章 羽織物に潜む悪魔

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 笹島はシヅノと二人にきりになると不適な笑いを浮かべると猪口に入っていた酒を一気に飲み干し早速話かけた。 「これで邪魔者はいなくなった。今宵はゆっくり楽しもうぞ」 そう言うと笹島はシヅノの肩に手を回し力強く抱き寄せた。 「きゃ」 突然のことに少し驚き思わず小声を上げるシヅノ。笹島はその小声を楽しむかのように再び不適な笑みを浮かべながらシヅノを見つめる。 「悲鳴など上げよって可愛い奴じゃ」 「笹島様、もうすぐお酒が運ばれて来ますわ」 「ん? 酒はもうよい。それよりもっと楽しませて貰うぞ」 「あら、お気が早いこと」 「ふっ、儂はせっかちでのう。特にこう言うことにはな」 そう言うとシヅノの肩に回した笹島の手にますます力が入る。それを感じたシヅノは肩を抱いている手にそっと自分の手を添える。 「あまりせっかち過ぎると女性に嫌われますわ」 「なあに、はじめのうちだけじゃ。時期によくなる」 「あらあら、悪いお人」 笹島はそんな言葉を気に止める様子もなくもう片方の手でシヅノの顔を自分の方へ向けると口づけをしようと自分の顔を近づける。シヅノは笹島の口にそっと手をやり求めを遮る。気持ちを押さえきれない笹島がシヅノに問いかける。
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