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「本当にせっかちなお人ですね。笹島様は」
すると笹島が再びシヅノを抱き寄せた。
「シヅノよ、ますます気に入ったわ。今宵は存分に楽しもうぞ」
そう言うと笹島はシヅノを強引に押し倒した。そして口づけをしようと顔を近づけた。だが、またしても笹島の口づけを遮るかのようにシヅノは話かけた。
「笹島様、その毛皮の羽織物にはもうひとつ秘密がありますの」
「秘密?」
「ええ」
「どのような秘密じゃ」
「ふふっ」
「もったいぶりよって。苦しゅうない申してみよ」
「それは、羽織物を着た者を私の思いのままに操ることができるようになるのです」
それを聞いた笹島は一瞬戸惑いの表情を見せた。そしてシヅノは笑顔で言い放った。
「もう、手遅れですわ」
次の瞬間、笹島は体を震わせ始めまるで獣が発するかのような声をあげ、そして首を掻きむしり畳の上を転がりながらもがき苦しみ出した。シヅノは体を起こしてその様子を傍らでじっと見つめていた。しばらくしてもがき苦しんでいた笹島が大人しくなった。その姿は一変し長い牙と爪を持っていた。その姿を見たシヅノは一人不適な笑みを浮かべた。
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