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申の刻を知らせる鐘の音が聞こえた頃、祖父の形見を取りに自宅へ戻っていたハチが駒屋に帰ってきた。
「親分、只今戻りました」
「おう」
ハチは早速、祖父の形見である十手と捕り物網を源治達に見せた。それはどちらも真っ黒で同心見習いの源治でさえ今まで見たこともない物であった。特に十手は独特の光沢を発して異様な雰囲気を漂わせていた。源治は十手をもっとよく見ようと手に取り何か手掛かりとなるようなものはないか角度を変えながら注意深く観察する。自分が携帯している十手を手に取り長さを比べて見るがその色以外に変わったところは見当たらない。大きく息を吐きながら首を傾げる。
「本当に真っ黒だな。こんな十手は今まで見たことねえ。だが、色が黒いと言う以外は俺が持っている十手と変わりはなさそうだが・・・」
次に源治は捕り物網の方へ目をやる。それに気が付いたハチが源治に捕り物網を差し出す。源治は捕り物網を手に取ると先ほどと同じように注意深く観察し徐に広げ始めた。するとその大きさが畳にして一畳程の大きさしかないことに気が付いた。
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