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「これは・・・毛皮ですか?」
「ええ、実は最近取引を始めた者が非常に暖かいのでぜひ一度扱ってほしいと持ち込んで着た物でしてね。ただうちは材木問屋なもので木材の知識はありますが羽織物についてはさっぱりでしてね」
「はあ」
「久兵衛さんは仕事柄色々な方とお話をされることがあるでしょうし話のネタの一つにでもなればと思いましてね」
「そういうことでしたか」
「ええ、一度着て頂いて色々な方の話を聞かせて貰えると私としても今後の参考にもなります」
「又五郎さんは着ないのですか」
「私も自宅で着ています。非常に暖かくて重宝しています」
「そうですか。そう言うことでしたら有り難く頂戴します」
「ええ、一度着て見て下さい。非常に暖かいですよ」
久兵衛は又五郎にそう言われその場で袖を通してみた。
「ほう、これはなかなか暖かいですな」
「でしょう。見た目は確かに毛皮なので戸惑うのですが着てみるとこれがなかなかの物でしょう」
「確かに。これは貴重な物を有り難うございます」
「いえいえ、気に入って頂けると私としても嬉しいです。それでは私はこれで失礼しますよ」
又五郎は久兵衛の満足そうな顔を見届けるとそのまま店を出た。そして暗い夜の町に一人ほくそ笑みながら消えていった。
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