第四章 深まる謎

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「ただその笛は壊れてるみたいで、いくら吹いても音は出ないんですよ。何でそんなものを爺ちゃんは持ってたんだろう」 それを聞いた源治が試しに吹いてみる。確かに何の音も出ない。 「う~ん、確かに何の音も出ねえなあ」 呼び子を見ていたお駒が口を開く。 「それにこの呼び子も色が真っ黒だね」 源治は手に持った真っ黒な呼び子を見つめながら口を真一文字にして黙り込む。小見はハチが持ってきた祖父の形見一つ一つにゆっくりと目をやりながら皆の話を黙って聞いていた。いくら考えても全く検討がつかない源治は大きく一つ息を吐くと諦めたかのように話す。 「ダメだ。全くわからん。まああれだな。ハチの爺さん、この捕り物網は畑仕事している時に荒らしに来たイタチや猪なんかを捕まえるのに使ってたのかもな」 源治の言葉を聞いたお駒が尋ねる。 「じゃあ、この黒い十手は?」 「さあな。検討もつかねえ。他の同心連中にもこんな黒い十手を持ってる奴は一人も居ねえ。それにこの呼び子も音が出ねえんじゃ役に立たねえしな」 その場にいる誰もが源治と同じように検討がつかないまま、ハチの祖父の形見を見つめ沈黙が流れる。すると、年上の従業員が思い出したかのように仕立て直しを終えた羽織りを手に取った。
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