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「そうそう、ハチさん羽織りの仕立て直し終わったよ。着てみるかい」
「本当ですか」
そう言うとハチは嬉しそうに早速羽織りに袖を通した。
「うわあ、ぴったりだ!! ありがとうございます」
羽織りを着たハチを見て源治がからかう。
「馬子にも衣装って奴だな」
重苦しい沈黙が一転、その場は和やかな空気に包まれた。年上の従業員はハチに伝える。
「色々分からない事が多いけど、その羽織りの生地はたいそう高価な物だから大事にしなよ」
「へい。なんせ爺ちゃんの匂いが残る大切な形見ですから」
ハチは子供のように喜んでいた。皆、ハチの祖父の形見に疑問を抱きつつも和やかな雰囲気になって暫く談笑していた。そして酉の刻を知らせる鐘の音が聞こえてきた時、年上の従業員がお駒に話し掛ける。
「お駒ちゃん、そろそろご飯の支度をしないとね」
「もうそんな時間、楽しいとあっという間に時が経つね。小見さん、せっかくだしご飯食べて行くでしょ。すぐに支度するね」
それを聞いて源治が言葉を返す。
「そいつは有り難てえ。ちょうど腹も空いてたしな」
源治の言葉にお駒が意地悪そうに突っ込む。
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