Part.1 普通じゃないことを求める普通

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 7月も後半、バスケ部の合宿に出かけてた俺は新宿に向かう電車の中にいた。  部員同士の雑談がそこそこ盛り上がるどこにでもあるような光景があり、その中に俺もいた。  都内に入り、電車が停車していくたびに一人、また一人と電車を降りていく。  下北沢を過ぎたころには、車内には俺と現キャプテンの桜川先輩だけが残っていた。  「さびしくなりやすね、先輩も引退で」  「バカ、まだ顔出すっつーの。選抜出るんだからさ」  「そーでした。ま、次期キャプテンは俺ってことで確定なんスよね」  「ああ、全会一致で決まった。ツラはともかく、他は十分素質ありだしな」 先輩はニヤケ顔を俺に向けてくる。  170cm代の身長に風でなびきそうなサラサラの茶髪セミショートにクールビューティ系の顔。漫画とかでこういう特徴のキャラだと言われると、たいていはクールなお姉様系のキャラを想像するかもしれないが、生憎俺は男。普通に生活してる高二の男子バスケ部員。(影で俺をお姉様扱いしてる後輩がいるらしいといううわさは聞いているが)  昔はこれをネタにされたことはあるが、今はない。昔から琉球武術を習ってたおかげか、喧嘩を吹っかけられても返り討ちにするだけの実力はあった。それに加えて、80年代の刑事ドラマとかにハマりまくって、そういう振る舞いを真似してたら男扱いしてくれる奴が多くなってくれた。  実際、俺は細身の体でも結構引き締まっている。それは黒系のジーンズにタンクトップ、その上にモスグリーンのフライトジャケット羽織ってる(+首元にヘッドホン、胸元にレイバンのサングラス)今の状態でも十分伝わってるんじゃないかと思ってる。
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