Part.1 普通じゃないことを求める普通

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 そんな間に電車は新宿駅に着いていた。  JRに乗り換える先輩と改札の手前で別れて、俺は地上に出る。  さっきまでの快適な冷房とうって変わって、真夏の熱気と蒸される感じが一気に俺の周りを支配しにかかる。もちろん勝ったのは熱気、たまったもんじゃない。  それでも外で休憩したがる連中を横目に通りを歩き続けると、"Little Cat"と書かれた看板が見えてくる。  その横を抜け建物沿いに歩くと、"来生""高中"と二段に小さく書かれた表札のかかった扉にぶつかる。  さっきの看板がかかってる店のあるこの建物は俺の家。表札が二段なのは、この家にもう一人来生 杏里(きすぎ あんり)って同級生が住んでるから。ちなみに、家主はあっち。  中学までは深川地区にある実家で暮らしてたけど、いろいろあってこの家で暮らしてる。時々、叔母がやってる下の店を手伝ってるおかげで家賃が少し安いのも選んだポイントになっている。  家に入ると、3階にある俺の部屋にリュックを放り込んでから2階のリビングにあるテレビの前のソファを占領する。傍らのラックから適当にブルーレイを取り出し、プレーヤーにかける。  再生が始まると、流れてきたのはなぜかカンフー映画のオープニングだった。(刑事ドラマの劇場版を入れたはずなのに)ジャケットを確認すると刑事ドラマのジャケットになってたから、誰かが入れ違えたとしか思えない。
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