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(……誰も居ないし、気のせいか。クソ、ビビっちまったぜ)
人目を気にするあまり、空耳が聞こえたのだろう。
そう考え、少年は踵を返して再び歩き出す。
だが、今度は後方から視線や声ではなく足音がしてきた。
コツ、コツ、コツと徐々に その足音は少年に近付いてくる。
空耳ではない、確かにハッキリと聞こえてくる それに少年の心が再び ざわつく。
(まさか……さっきのジジイが追いかけて来たのか!?)
こんな事ならもっと痛めつけておくべきだったと苛立ちつつも、男性を振り切ろうと走り出す。
だが彼を追う足音は一行に遠ざからず、それどころか近づいてきている。
(面倒くせー! こうなったらもう一度ボコボコにしてやらあ!)
あんな非力な中年くらい簡単に倒せると思いたち、拳を構えて振り返る少年。
だが彼が見ている方向には誰もおらず、ただ暗闇が広がっているだけだった。
警戒しつつ周囲を見ても、やはり人は居ない。
先程まで聞こえていた足音も聞こえなくなっていた。
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