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*相変わらずな僕ら・1*
「おはようさん」
エリア第七区警察署、特務捜査課。
出勤すると、先に来ていた中川さんがにこやかに挨拶をしてくれた。
「おはようございます」
デスクに座っている中川さんは、新聞を片手に湯呑みに入った緑茶を啜ると、その湯呑みを置いてから軽く手を挙げる。
この時代、紙の手触りが無いと読んだ気がしない、と、新聞や本をこよなく愛するベテラン刑事、中川宗介。
エリア第七区の長老的存在で、その経験の豊富さからくるアドバイスは非常に貴重だ。
生き字引き、そのものの中川さんは、苺大福をこよなく愛する縁側のおじいちゃん的存在でもある。
会釈をして中川さんの前を通り過ぎ、自分のデスクへと向かう。
「よっ! 今日も宜しくな!」
そんな俺に声を掛けたのは、第七区特務捜査課きっての体力派で知られる、響夏生先輩だ。
細かい事は気にしないサバサバした性格で、俺にとっては兄のような頼り甲斐のある先輩で、過去、この人に助けられた事は数えきれないくらいある。
野生児もビックリな野生のカン。
そのお陰で命まで救われた事は、記憶にまだ新しい。
本能で生きる男、それが響先輩だ。
いや、馬鹿にはしてませんよ。
「おはようございます。宜しくお願いします」
挨拶をして通り過ぎる俺に、先輩は親指を立ててニカッと笑った。
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