424人が本棚に入れています
本棚に追加
思い当たる節がない俺は、恐る恐る西田課長を見返す。
「この前の件の報告書が見当たらないが? あれは相川が指揮をしていた筈だよなぁ?」
「えっ…と?指揮を担当したのは、確かにそうですが…」
報告書を作成する前の段階である、経緯などを説明した詳細書は提出済みだ。
「詳細書は…出しました…よね?」
え?
俺、出し忘れてる?
ていうか、報告書は西田課長の担当だった筈では?
沢山のクエスチョンを頭の上に浮かべながら返す俺に、西田課長は盛大な溜息をついた。
「報告書だよ、報告書! 俺が言ってるのは、ほ・う・こ・く・しょ! いつまで待たせる気かと聞いてるんだよ、このタコがぁ!」
いきなり烈火の如く怒声を浴びせられ、怯える猫の如く肩を竦める。
ついでに唾まで飛ばされた。
「え…?でも、報告書は西田課長の、お仕事では…」
「『でも』も、『へったくれ』もあるか! 俺はなぁ、忙しいんだよ! それをフォローしての部下だろうがぁ!」
えーーー?
何、その理不尽ー。
などとは言えず、顔に飛んできた飛沫をハンカチでそっと拭う。
「いやぁー、頼まれなかったので…」
精一杯の抵抗を試みた俺に、西田課長は眼鏡をカタカタと揺らしながら怒鳴った。
「言われる前にやるのが社会人だ! このタコ助がぁ!」
ひぃ〜〜〜‼︎
耳を塞ぎたい衝動を押し留めながら、必死に足を踏ん張る。
最初のコメントを投稿しよう!