相変わらずな僕ら

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永瀬優弥(ながせゆうや)。 中学で出会い、高校、大学、就職まで一緒という、言うなれば幼馴染みだ。 頭が良いだけでなく、武道も出来て、甘い顔立ちでモデルのような体格なのに、嫌味のない爽やかな性格の持ち主。 男達からは嫉妬の眼差し、女性からは好意の眼差しを集める優弥は、優しい微笑みで声を掛けてくれた。 「おはよう」 顔が赤くなっていないだろうか。 ドキドキしながら挨拶を返した俺に、優弥は更に甘く微笑みながら、声を潜めた。 「残業になりそうなら、遠慮しないで声を掛けろよ。手伝うから」 「あ、ありがとう」 そんなに顔を近付けないで欲しい。 西田課長じゃないが、茹でダコのように顔が赤くなりそうだ。 何せ、俺はこの幼馴染みに、十年以上も片想いをしていた。 「その後、一緒にレイトショーに行こう。和幸が見たいって言ってた映画、やってる所見つけたから」 そう、『していた』。 過去形だ。 今でも夢なんじゃないかと疑いそうになるが、その十年以上の片想いを実らせて、今は恋人同士という新しい関係性に発展している。 不幸体質の俺だが、諦めず、グレずに日々を真面目に生きてきた俺への、神様からのご褒美だと思っている。 もしくは、人生最大のラッキー。 もう、この先のラッキーを使い果たしてしまったかもしれないが、それでも構わないくらいには、いま最高に幸せだ。 優弥に愛想をつかれたら、きっとドン底に落ちるに違いない。 その時、俺は正気でいられるんだろうか……。 また、いつもの『上げておいて、叩き落とす』じゃなきゃいいが……。 通常運転の不幸体質に、ついついそんなネガティブ思考に陥りそうになる。
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