No salvation ②

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(暑いな……) ゼロの担当である温室へ、夕飯に使うバジルを摘みに入った私は、思わずネクタイを緩めた。 昼間温められた室内の空気は、夕方になっても冷めない。 インドネシアを彷彿とさせる温度や湿度、草木の香りが、切なく郷愁を駆り立てる。 取り戻せない幸福な時間と、地獄のような制裁の記憶を引きずり出されてしまうので、あまりここには長居したくない。
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