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結局、居眠りも許されずの対面の儀の後。
それからそういう事で【遊び仲間】として仲良しになった。
あくまでも【お友達】としてだったけど。
水干の袖を翻して波と追いかけっこをしたり砂を掘り返したり、流れ着いたものを観察する毎日。
「一幡、また都から人質が来るらしいよ」
自分も人質。
はっきりそう言い切る悲しさをあのころのワタシは知らなかった。
「義高さま以外にも、私はお婿さんをもらうの?」
うっかり、人質=お婿さんの図式が綺麗に出来上がっていたのはまあ仕方ない。
「お前、馬鹿だよな・・・・・・」
その日は、浜辺でおやつになりそうな食べ物を拾っては、郎党の子たちとはしゃぎまわっていた。小魚を郎党たちはおやつにしようと奮闘しているのを「姫様は一応危ないので」と義高さまの監視付きで少しだけ波から離れたところに立たされていたけど。
それでもワクワクする。
今までは年上か、乳児の弟しか知らなかった私にとっては新鮮な世界だった。
「まあ、お気楽なところがいいんだよな」
へにゃりと、相好を崩して笑う義高につられて笑顔がこぼれる。
いつものように手を取ると、少しだけ指先の体温が冷たかった。
「・・・・・」
「一幡?」
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