寿永2年 春

9/10
前へ
/10ページ
次へ
 私の元へ婿へきて一年になるかならないか。  そんなわずかな間に、あっという間に義高は本来の役割を果たす時が近づく。  義高の父が、討たれてから、彼の立場は微妙になりつつあったのだ。 「一幡?」  いつ、この時間が終わるのか。  いつ、終わらされるのか。 「考えても仕方ないだろ」  この時、彼はそう言って私の手を振りほどいて、優しく頭に手を乗せてくれたのはよく覚えている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加