1678人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
ふっと、淡く笑んだ佐川の表情は、たしなめるものに変わっていた。
凪いだ海のように……穏やかな空気をまとっている。
「君の思いはわかった。でも、俺は受け入れられない。それだけだよ」
すうっと、静かに。
まるで私の勢いを殺し、吸収するかのように……佐川は言った。
その言葉が、私の中心を、射抜いていく。
痛い。胸が、張り裂けそうなほどに。
苦しい。呼吸が、上手くできないくらいに。
はっきりと、突き付けられた。
どれだけ足掻いても、駄目なのだと。
彼の思いは変わらない。
私の想いは届かない。
佐川の表情が、声が、その空気が……その事実を、伝えていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!