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「私の気持ちは嬉しいって、言ったじゃない! だったらどうして……っ、どうして、素直に受け入れてくれないの!?」
「……」
黙り込む佐川に、苛立ちばかりが募っていく。
どうして、どうして、と。
繰り返すばかりの私は、自分に都合のいい答えを求めているだけだ。わかっている。
たとえ理由が述べられても、私自身が受け入れられなければずっと同じ問い掛けを繰り返し続けるのだろう。
それでもやめられない。
だって、佐川は言ったわ。私の気持ちを嬉しいと。
その思いは嘘じゃないはず。それだけは信じられる。
あの夜、まるで自然にそうなったかのように触れ合った唇も。
彼の体温も、私たちの間にあった熱っぽい空気も、それを証明している。
なのに、なぜ。
「……自分の思うがままに突っ走れるのは、若い人の特権だ」
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