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「そうだな。君には日陰の女なんて似合わない」
「……」
「正反対なタイプだろうな」
どういうつもりでそんなことを言うのだろう。
『似合わない』のなら何だっていうの。
『正反対』なら何なの。意図がつかめない。
普段以上に歯痒さを感じてしまうのは、傷付きたくないがゆえに踏み込むのを恐れる自分のせいだろうか。
「……それで」
弱気な自分を押し込めて、私はたずねる。
もとより、こんなことで折れるくらいなら食い下がったりしない。
「あなたは、結婚しているの?」
わずかに震えた声を隠すように、私は目を細めた。
問い詰めるような質問に、佐川は淡く笑って「ああ」と頷いた。
大きな衝撃を受けている私に、彼は続ける。
「大昔に、一度ね」
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