ホシゾラ

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ツツバヤのことを考えると、気が変になりそうだ。 きっと退屈して、恐怖に駆られ、叫びたいはず。しかし、植物の体は風に揺れるだけ。 ツツバヤは今、何を考えているだろう? リュの帰りを待ってくれているのだろうか。あるいは、リュのことなどとっくに忘れているのだろうか。 遠くに、ツツバヤが見える! 白い花が所々に咲く草原、それも地平線上に彼女の姿があった。 短いポニーテールの髪、見慣れた桃色と小豆色のワンピース。 黄色い空にも違和感はない。草原だって、ずっと遠くまで広がっている。 草原に向けて架かる橋の上を駆けるリュ。 「おーい! ツツバヤー!」 息が苦しくなって、それでも嬉しく、心の底がぐっと縮んだように何かが込み上げていた。乾いた喉、ツーンと奥が沁みる鼻、熱い目の淵。 すると、ずっと遠くをみているリュの目の前でツツバヤが、 …………………………向こうへ行ってしまった。 「うわあ!」 足元の吊り橋が崩壊し、空は黄色、黄土色、オレンジ、黒へと歪むように変わっていき、リュは暗闇に落ちていった。 草原の断面は遠ざかっていった……。 「……ブサン。トブサン。はあ。起きない。ラベ、マー、このままじゃ、ねれない。トブサン、起こす方法、ある? ……あ、起きた」 目を開くと、そこには見慣れたマーガレットの姿があった。 「マーガレット! 無事か?! 橋が崩れてから、あんなに深い谷に落ちて、怖かった!」 「トブサン、寝ぼけてる。ん? ラベ、なに。あ、本気に聞かないのが、いい。そうだね」 周りを見ると、いつもの大草原。 群青色の空に、星が輝く。 夢か。なんだ、さっきのは夢か! リュは、仮名を「トブ・サンダー」という。訳あって、旅を続けている。なぜこれが仮名かというと、本名を知らないからだ。そして訳あって、体は電気でできている。訳あって。あと、リュというのは自分の呼び方だ。気にしないでくれ。 マーガレットは、リュの旅仲間。肩までの金髪をもつ少女で、コスモスというこの辺一帯でスーパー人気を誇るアイドルに容姿がよく似ている。 ラベとは、ラベンダーのこと。旅仲間のぬいぐるみで、実際、日記を通して話をする事ができる。ある意味で関心が湧く。 あとは、ライ。茶色と黒のポツポツ模様が特徴の子馬で、マーガレットを背中に乗せて旅をしている。 そして今日も、2人と一個と一匹で旅をしていた。
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