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「どうせ、私なんて」
友人は黙って聞いてやれと言っていた。女の子は自分の思っていることや、聞いてほしいことは無駄口を叩かずに聞いてやるべきだと言っていた。本当かどうかは知らないが、
「いつか愛想つかされる」
「ないよ」
「え?」
「嫌いなったりしてないよ。今も好きだし」
スッキリと気持ちが言葉になった。
「ナポリタンだって、いつも食べてたらもういいやって思うけどさ、別に嫌いになったわけじゃないんだ」
「ナポリタンの話?」
「いや、僕が君のことがとっても好きって話」
わかりにくい言い回しになったが、逆にそれがよかったらしい。不意打ちをくらったように彼女の頬が真っ赤に染まる。恥ずかしいからあんまり言いたくないが言わないと伝わらない気持ちはある。
「そーいう遠慮なく言うところ、反則」
「そうかな、これでも悩んだんだよ。君がいないと一人で食べるご飯は美味しくないしさ」
「飯炊き女みたく言わないで」
「それでもいてほしい。一人はいやだ。寂しい」
「ダメ人間」
「ごもっとも」
と答えた僕に、彼女はムッとした表情をゆるめて諦めたように笑った。
「仕方ないから、私、がんばる」
「ん、具体的に何を?」
「今度は、パスタに挑戦する」
「麺類なんだ」
「何か言った?」
「いえいえ、何にも、このナポリタン、食べていい?」
「どうぞ。召し上がれ」
そう言って彼女はニッコリと笑顔をみせて、僕らは仲直りできたのだった。
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