3819人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
ようやく幹線道路に出てタクシーに乗り、自宅に着いた頃にはすっかり日付も変わっていた。
この家を中古で購入してもうじき1年。
築35年の物件だけに玄関の鍵も実にレトロ。
けれどこの家に決めたのは、小さな池とこの落ち着いた雰囲気の縁側があるからだ。
呉服屋だった実家の影響で、いまだに好んでしまう着流しに袖を通し、縁側で月を眺めながら寝転がる。
これが俺のお気に入りのスタイルだった。
冴子を失ってからの俺は、こうしてひとりで生きることに何の抵抗もなかったのに。
不思議なものだ。
葉月や映見と出会ってからこの孤独な時間が無性に寂しく感じ始めた自分がいる。
最初のコメントを投稿しよう!